EPA DHA 比率 : EPA・DHA の“最適バランス”を考える前に知っておきたいこと
オメガ3を選ぶとき、ラベルに小さく書かれた「EPA:DHA=◯:◯」を見て、結局どれがいいのか分からなくなった経験、きっとあると思う。僕自身も、初めて魚油サプリを選ぼうとした時は、EPAが多い方がいいのか、それともDHAが高配合なのが良いのか…そんな迷いが続いていた。
ところが、医学論文を丁寧に追いかけていくと、この比率には“目的によって最適解が異なる”という、意外と単純じゃない結論にたどり着く。つまり、EPAが正義でもDHAが万能でもなく、どのような健康効果を狙うかでバランスが変わるというわけだ。
このガイドでは、最新研究と臨床データに基づきながら、一般の人でも迷わず選べる「EPA・DHAの最適比率」を、少しゆっくり、そして人間の言葉で噛み砕きながら説明していく。
EPA と DHA の基本作用を“人が理解できる言葉”でまとめると
この2つはどちらもオメガ3脂肪酸だが、体内での役割は少し違う。言い換えると、**EPAは“血液と炎症”、DHAは“脳と神経”**に強みがある。
● EPA の主な特徴
- 血液をサラサラにする(血小板凝集の抑制)
- 心血管リスクの低減
- 体内の炎症性サイトカイン(IL-6, TNF-α 等)の低減
- 気分の安定作用にも関与
- 中性脂肪値の低下がDHAより強い
EPAに関する代表的な研究の1つが REDUCE-IT 試験。
高用量EPA(4g / day)が心血管イベントを25%減少させたという有名な臨床試験で、PubMedにも詳細が残っている。
👉 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30415628/
● DHA の主な特徴
- 脳・神経細胞膜の主要構成脂肪酸
- 記憶・学習・認知機能に関与
- 視覚機能の維持
- 妊娠期・小児で特に重要
- EPAよりも細胞膜への取り込みが強い
DHAに関する研究は数多いが、妊娠期のDHA摂取と胎児の脳発達に関するWHO報告は特に有名だ。
👉 https://www.who.int/elena/titles/fish_oils_pregnancy/en/
こうして整理すると、“身体の血管系”に強いEPA、
そして “脳・神経”に強いDHA というイメージが理解しやすいと思う。

では結局、EPA・DHA の比率はどう選ぶべき?
ここからが本題。
結論から言えば、
目的別に比率を選ぶのが最も理にかなっている。
以下の内容は、複数の大規模研究(JELIS, REDUCE-IT, VITAL study など)と、Cleveland Clinic・Harvard Health のレビューを統合して導いたものだ。
(参考:
Cleveland Clinic → https://health.clevelandclinic.org
Harvard Health → https://www.health.harvard.edu/heart-health)
【目的別】EPA・DHA 最適比率 〜最新エビデンスを踏まえて〜
① 心血管リスクの低減を狙う → EPA 高め(EPA:DHA=2:1)
心血管目的では EPA が多めの配合が最も研究されている。
- REDUCE-IT:EPA 4g/日 → 心血管イベント−25%
- JELIS:EPA 1800mg/日 → 再発率−19%
DHA高配合のサプリでは、同等の心血管保護効果を示すデータはほとんどない。
👉 迷ったら EPA 優位(2:1〜3:1)。
② 中性脂肪が気になる → EPA:DHA=2:1〜1:1
EPAが中性脂肪低減に強いのは事実だが、DHAも一定の作用を持つ。論文を読む限り、どちらか極端に偏るよりも、**バランス型(EPA優位〜同等)**が最も実用的。
- TG(中性脂肪)は EPA が強い
- HDL(善玉コレステロール)は DHA が強い
👉 総合的に代謝ケアをしたい人は 2:1〜1:1。
③ 脳・集中・認知機能のサポート → DHA 高め(EPA:DHA=1:2〜1:3)
脳は DHA の“貯蔵庫”と言われるほど、DHAを優先的に利用する。
- 認知機能サポート
- 視界のクリアさ
- メンタル集中力
特に高齢者では DHAの血中濃度が認知機能と強く相関することが多くの研究で示されている。
👉 頭脳目的なら DHA 優位(1:2〜1:3)。
④ メンタルケア(気分の安定・ストレス) → EPA 高め(EPA:DHA=1.5:1 付近)
気分の波、ストレス、軽度の不安などでは EPA が優位。
あるメタ解析(NIH 論文)によると、
EPA比率が60%以上の製剤で有意な改善効果が見られたと報告されている。
👉 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31372546/
⑤ 筋肉・炎症ケア(スポーツ後の回復) → EPA:DHA=1:1 が最もバランス良い
EPAの抗炎症作用と、DHAの細胞膜柔軟性のサポートが両方必要になるため、研究でも 1:1 が最も安定して結果が良い。
■ 総まとめ:目的別 早見表
| 目的 | 最適比率 |
|---|---|
| 心血管 | EPA 優位(2:1〜3:1) |
| 中性脂肪 | EPA 優位〜1:1 |
| 認知・脳 | DHA 優位(1:2〜1:3) |
| メンタル | EPA 60%以上 |
| 炎症・筋肉 | 1:1 |

オメガ3の“不足サイン”を知っておくと選びやすい
実際、多くの人が気づかないうちにオメガ3不足になっている。
以下は、研究でよく見られる不足兆候だ。
- 皮膚が乾燥しやすい
- 集中力の低下
- 怒りっぽくなる、気分が安定しない
- 中性脂肪が高い
- 視覚疲労
- 肩こり・関節違和感
特に DHA不足は脳・神経症状に結びつきやすい。
EPA不足は 炎症・代謝系に影響する。
どれくらい摂れば安全で効果的なのか(推奨量)
国際的な基準を統合すると、成人の一般的な推奨は以下。
- 1日 500〜1000mg(EPA+DHA合計)
- 心血管目的:2000〜4000mg
- 妊娠期・授乳期は DHA 200〜300mg
ただし、2000mg以上は必ず医療者と相談が必要。
血液サラサラ作用が強く出るため、抗凝固薬との併用は注意。
オメガ3サプリを選ぶときの“プロのチェックポイント”
サプリの裏側を読むのは意外と面倒だが、以下を知っておくと失敗しない。
● 1) EPA・DHAの比率
今日のテーマそのもの。必ず確認。
● 2) 1粒あたりのEPA+DHA量
多くの製品は1粒で300〜500mg。
400mg以上なら優秀。
● 3) トリグリセリド(TG)型か
吸収率は TG型が最も安定している。
エチルエステル型は安いが吸収効率が落ちる。
● 4) 酸化具合(TOTOX値)
酸化された魚油は逆に炎症を促すこともある。
TOTOXは20以下が理想。
● 5) IFOS認証
第三者機関の安全性認証。
これがある製品は信頼度が高い。
よくある誤解と、研究が示す“本当のところ”
● 誤解①:EPAもDHAも多ければ多いほど良い
→ 量だけ増やせば良いわけではない。
比率が変わると効果の出方がまったく違う。
● 誤解②:EPAとDHAは体内で自由に変換される
→ 人体では EPA→DHA の変換はわずか1〜5%。
比率は外からの摂取で決まる。
● 誤解③:えごま油や亜麻仁油で十分
→ ALAからEPA/DHAへの変換率は5%以下。
魚油とは作用が別物。
実際にどう選べばいいのか?“3ステップで迷わない方法”
① 今の目的を1つ決める
心血管なのか、脳なのか、ストレスなのか。
② 目的に合う比率を当てはめる
今日の表を使うだけ。
③ 1日の総量を決める
一般なら 500〜1000mg。
これだけで、ほとんどの人はもう迷わなくなる。

結論:最適比率は人によって違うが、“原則”は存在する
EPA・DHAの比率は単なる数字ではなく、目的に合わせた“戦略”のようなものだ。
- 心血管 → EPA
- 脳 → DHA
- メンタル → EPA高め
- 炎症 → バランス型
これを理解しておくと、サプリ選びの精度は一気に上がる。
FAQ
Q1. 迷ったら EPA と DHA はどんな比率がいい?
A. 健康維持が目的なら EPA:DHA=1:1 が最も無難。
Q2. DHAが多いと太る?
A. 太らない。むしろ脂質代謝を助ける作用がある。
Q3. オメガ3はいつ飲むのが良い?
A. 食後が最も吸収が良い。特に脂質を含む食事と相性が良い。
Q4. 妊娠中はどれくらいのDHAが必要?
A. WHOは 200〜300mg/日を推奨。
Q5. 何ヶ月くらいで効果を感じる?
A. 血中濃度が安定するまで 4〜8週間 ほど。
参考文献(外部リンク)
- PubMed(REDUCE-IT)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30415628/ - WHO DHA in Pregnancy
https://www.who.int/elena/titles/fish_oils_pregnancy/en/ - Harvard Health Publishing
https://www.health.harvard.edu - Cleveland Clinic 健康情報
https://health.clevelandclinic.org